ラボ型開発とは、一定期間、特定のエンジニアを自社専属のチームとして確保し、優先順位を変えながら継続的に開発を進める方式です。作るものと金額・納期を先に決めて完成を約束してもらう請負型開発と比べて、仕様が変わりやすい自社サービスや、リリース後の継続的な改善に向いています。
一方で、何を作るかを決め、チームを動かす役割は発注側が担います。この記事では、開発体制の選び方に絞って、ラボ型と請負型の違い、向いているケース、運用のコツを整理します。契約書の個別の条項は、オフショア開発の契約チェックリストで扱っています。
要点まとめ
- ラボ型開発(ラボ契約、専属チーム型)は、月単位でエンジニアの稼働を確保し、開発内容を発注側と相談しながら決める方式で、オフショア開発でよく使われる言葉です。
- 請負型開発は、決められた成果物の完成に対して報酬を支払う方式で、日本の民法では請負(第632条)に当たります。
- ラボ型開発は準委任契約の形をとることが多いものの、海外の会社との契約では外国法が準拠法になる場合があるため、契約ごとに確認が必要です。
- ラボ型開発の成否は、発注側にプロダクトオーナー(開発の優先順位を決める責任者)を置けるかどうかで大きく変わります。
- 日本のソフトウェア企業向けに、6〜10名の専属チームを2023年1月から継続している公開事例があり、納期遵守の評価は5.0です。
ラボ型開発と請負型開発の違い
| 比較の観点 | ラボ型開発 | 請負型開発 |
|---|---|---|
| 契約の対象 | 一定期間のチームの稼働 | 決められた成果物の完成 |
| 費用の決まり方 | 人数×期間の月額が中心 | 要件に基づく総額 |
| 仕様変更 | 優先順位の入れ替えで対応 | 追加見積もり・契約変更が必要 |
| 発注側の役割 | 優先順位の決定、受け入れ確認を継続的に行う | 要件定義と検収が中心 |
| ノウハウの蓄積 | 同じメンバーに知識がたまりやすい | 案件ごとに区切られやすい |
| 主なリスク | 優先順位が定まらないと費用だけかかる | 要件の誤りが後半で発覚しやすい |
日本の民法では、請負は「ある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払う」契約とされています(民法 第632条)。ラボ型開発で多い準委任契約は、法律行為でない事務の委託に委任の規定を準用するもので(同法 第656条)、成果に対して報酬を支払う形の定め(同法 第648条の2)もあります。
ただし、海外の会社との契約では、日本法ではない法律が準拠法になることがあります。たとえば当社の契約は、シンガポール法人がシンガポール法に基づく基本契約(MSA)で結んでいます。エンジニアが日本国内の発注者先に常駐する場合は、指揮命令の関係が契約形態と整合しているかにも注意が必要です。本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的助言ではありません。
公開事例 日本企業との専属チームと長期パートナーシップ
ベトナム・ハノイを拠点とするAI開発会社NKKTech Globalには、日本企業との継続的な体制について2つの公開事例があります。
- 日本のソフトウェア企業(NDAにより社名非公開)向けの専属開発チーム:採用が難しい市場で、直接雇用の負担なく開発体制を拡大したいという課題に対し、6〜10名のエンジニアによる専属チームを2023年1月から提供しています。カスタムソフトウェア、Web・モバイル開発、リリース作業、運用までを担当し、納期遵守の評価は5.0、3年以上の継続となっています(公開事例)。
- 日本のテクノロジー企業とのAI・ARのパートナーシップ:3年以上にわたってAIエージェントシステムとARの開発を継続しています。AIエージェントの導入で処理時間がおよそ30%短縮されたと公開事例に記載されています。
どちらも、複数年にわたって同じ発注者と開発を続けている継続型の体制の例です。
ラボ型開発が向くケース、向かないケース
向いているのは、次のような場合です。
- 自社のWebサービスやアプリを、リリース後も継続的に改善していく
- 市場の反応を見ながら機能の優先順位を頻繁に変えたい
- 社内にプロダクトオーナーを置ける
- 半年以上の期間で、同じメンバーに知識を蓄積してほしい
反対に、作るものが明確で仕様変更がほとんど見込まれない場合、予算の総額を先に確定したい場合、社内に優先順位を判断できる人がいない場合は、請負型や範囲を固定した開発の方が適しています。継続的な開発量が多くない場合は、国内のフリーランスや開発会社に必要なときだけ依頼する方が合理的なこともあり、社内採用による内製化も含めて比較するのがおすすめです。
立ち上げの最初の1か月で行うこと
ラボ型開発の成否は、立ち上げ期間の進め方で大きく変わります。最初の1か月で、次のことを済ませておくと、その後の生産性が安定します。
- 開発環境と権限の準備:リポジトリ、課題管理ツール、検証環境へのアクセスを発行し、本番環境の権限は必要最小限にします。
- 規約とルールの共有:コーディング規約、ブランチの運用、レビューの基準、リリースの手順を文書で共有します。
- 小さなタスクで品質を確かめる:最初の数週間は、影響範囲の小さい改修や不具合修正を割り当て、コードの品質とコミュニケーションの癖を確認します。
- 定例の形を決める:日次の短い進捗共有、週次の計画と振り返り、月次の報告の形式と参加者を決めます。
- ドキュメントの置き場所を決める:仕様、設計判断の理由、運用手順を1か所にまとめ、メンバーが入れ替わっても引き継げるようにします。
あわせて、立ち上げ期間の終わりに、発注側と開発側で「うまくいっていること」「変えたいこと」を率直に話し合う場を設けると、その後の改善が進めやすくなります。
この期間に見つかった認識のずれは、早めに解消するほど後の手戻りが小さくなります。
運用で差がつく5つのポイント
- プロダクトオーナーを決める。開発の優先順位を決め、成果を受け入れる責任者を発注側に置きます。
- バックログを共有する。やるべきことを一覧にし、優先順位と完了の条件を明記します。1〜2週間の短いサイクルで計画と振り返りを行います。
- 窓口を決める。日本語で要件を伝え、技術的な判断をすり合わせる担当者(プロジェクトマネージャーやブリッジSE)の役割を明確にします。
- 月ごとの指標を持つ。リリースした機能、解決した不具合、品質指標などを毎月確認します。
- リポジトリとアカウントを自社名義で管理する。ソースコードやクラウドの管理権限を発注側が持ち、メンバーが変わっても引き継げる状態にします。
費用を比べるときは、月額の単価だけでなく、発注側の管理にかかる時間も含めます。プロダクトオーナーが毎週時間を確保できなければ、月額が安くてもチームの稼働が成果につながりません。ベトナムは日本より2時間遅れのため、日本の営業時間の大部分でやり取りができます。
当社の専属チームは2026年10月時点でUSD 8,000/月から、範囲を固定した本開発はUSD 10,000(当社参考レートで約150万円)からで、いずれも時間単位の請求は行いません。AI開発の専属チームを検討している場合は、まず1つのユースケースに絞ったNKKTechの AI Pilot で進め方を確かめる方法もあります。料金の詳細は料金ページ、日本のお客様向けの体制は日本向けページ、継続的なAI開発の例はAIエージェント開発をご覧ください。
よくある質問
ラボ型開発と準委任契約は同じものですか? 同じではありません。ラボ型開発は開発の進め方や体制を指す言葉で、準委任契約は法律上の契約の種類です。ラボ型開発では準委任契約の形をとることが多いものの、契約内容や準拠法は会社や案件ごとに異なるため、個別に確認が必要です。
ラボ型開発の費用はどのように決まりますか? 一般的には、チームの人数・役割・期間に応じた月額で決まります。エンジニアのスキル、プロジェクトマネージャーやテスト担当を含むかどうかでも変わります。当社の専属チームは2026年10月時点でUSD 8,000/月からです。
ラボ型開発の最低契約期間はどれくらいですか? 会社によって異なるため、契約前に最低期間と、途中で人数を増減したり解約したりする場合の条件を確認しておきましょう。チームに知識がたまるまでには一定の期間がかかるため、短期間で成果を求める場合は、範囲を固定した開発から始める方が適していることがあります。
次のステップ
継続的に改善したいサービスがあるのか、作るものが決まっているのかを教えていただければ、適した体制をご提案します。NKKTechは専属チーム、範囲を固定した開発、AI Pilotの中から、社内の体制に合う形を固定価格でご提示します。
ベトナムのシニアエンジニアが担当。スコープを明確にし、3営業日以内に書面でご提案します。

10 years of experience working with Japanese companies — two of those years based in Japan. Has run the business since 2018 (as NKKTech since 2025) with a senior-only engineering model.